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「魔人探偵脳噛ネウロ」
松井優征 集英社 ジャンプコミックス |
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「この『謎』はもはや我が輩の舌の上だ」
「謎」が主食の魔人・脳噛ネウロ。魔界の「謎」を喰いつくしても満たされなかった脳髄の飢えを満たすため、彼は地上に現れた。ある事情により地上で目立つことができないネウロは、何者かに父親を殺された女子高生・桂木弥子を名探偵に仕立てあげ、彼自身はその助手として次々と起こる様々な事件の「謎」を解き明かしていく…、という「推理物の皮をかぶった、単純娯楽漫画です。」(作者談)
作者が述べる通り、本作は推理物ではなく、あくまで娯楽を追求した少年漫画である。現に作中では、探偵たちが何度も事件に遭遇する理由が物語の都合ではなくエサを求める魔人の能力だったり、探偵と助手の立場が逆転しているどころかSMプレイの域にまで達していたり、殺人事件が起きても犯人を憎むどころか嬉しそうにヨダレを垂らしていたり、推理物のキモであるトリックに無理があるどころかツッコんでくれと言わんばかりの仕掛けだったり、犯人が動機を話しても同情の余地がないどころか人外じみた豹変をして攻撃してきたりなど、いわゆる「お約束」を皮肉った表現が目につく。つまり、「金田一少年の事件簿」や「名探偵コナン」のような作品を期待して読むと痛い目を見るということだ。
あと、プロのストーリー漫画家にしては絵が下手だ。特に人体の描き方がおかしい。だが、妙な肉々しさというか生々しさがあり、それらが醸し出す雰囲気が作品の持ち味でもあるシュールさを形作る上で欠かせないものとなっている。また、魔界バージョンのネウロや魔界道具、犯人の豹変した姿などの造型のインパクトは一度見たら忘れられないほどだ。ゆえに一般的な読者にとって敬遠されるであろう絵柄だが、慣れてしまえばむしろ「この絵柄じゃなきゃダメだ」と思うことだろう。
その独特の絵柄で描かれる登場人物の多くは楽しい人々ばかりだ。といっても「友達になりたい」という意味での楽しい人々ではなく、「遠巻きに見ている分には楽しい」という意味であり、つまりあまりにもクセが強いので出来ればお近づきになりたくない人々ということである。というのも共感できる部分が少ないからである。特に犯人には何一つ共感できない。しかし、例え共感は得られなくとも圧倒的なインパクトによって作品に引きずり込むというある種の力技によって、つい最後まで彼らの行く末を見届けたいと思ってしまう。
ただ、個人的に本作は推理物でもなければ単純娯楽漫画でもない。ネウロと弥子の掛け合いや犯人の豹変は単純に読者を楽しませるものでもあるが、その裏には必ず芯の通ったメッセージが存在しており、また、ネウロと共に人間の強さや弱さにふれながら成長していく弥子のモノローグには決して単純ではない感情が込められている。そして、世間を風刺した数々の小ネタから「人間の進化の可能性」という一大テーマまでを絶妙な構成で組み込んだストーリーには、もはや単純とは呼べない、緻密な計算に基づく創意工夫を感じるからだ。作者はまた「本作は基本的にB級漫画です。」とも述べている。A級グルメばかりを味わうのもよいが、時には極上のB級グルメというのもまたオツなものではないだろうか。 |
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